歯を失ったときの治療法として、近年多くの人が選択しているインプラント。そのインプラントオペには、一回法と二回法があります。今回は、インプラント手術の一回法、二回法についてご紹介します。
インプラントの構造
一言でインプラントと言っても、その構造についてまず知っておく必要があります。一回法と二回法の違いの前に、まずインプラントの構造について説明します。
歯科用インプラントは、3つのパーツで構成されています。顎の骨に埋め込み、人工歯根の役割を果たす「インプラント体」、インプラント体と上に被せる歯を繋ぐ部品「アバットメント」、そして「上部構造」と呼ばれる人工歯の3つです。
中にはインプラント本体とアバットメントがひとつになった一体型になったものがありますが、こちらではインプラント本体とアバットメントが別々の構造で作られたものを前提に説明します。
一回法の流れ
インプラント一回法は、外科手術を一回のみ行う治療法です。インプラントを顎の骨に埋めるとき、アバットメントを歯ぐきの外に出しておいて、インプラントと顎の骨の結合を待ちます。その後結合を確認し、人工歯の型取りを行って出来上がった人工歯を着けます。
外科手術が一回で終わるため、患者さまの負担が少ないことが最大のメリットです。
1.インプラント埋入手術
歯を失った部分の歯ぐきに局所麻酔を打ち、痛みを取り除いてから歯ぐきを切開し、専用ドリルを使って顎の骨に穴を開けます。インプラント体を顎の骨に埋めて、アバットメントまで取り付けて頭の部分を出しておきます。この時、仮のアバットメントを装着する場合もあります。これで一次手術は終了です。
2.骨との結合期間
手術後、顎の骨とインプラントの結合期間に入ります。結合期間は患者さんの骨の状態や部位により異なります。
3.型取りの後、人工歯を着ける
顎の骨とインプラントの結合を確認した後、被せ物である人工歯の型取りを行います。型取り後、人工歯が出来上がるとアバットメントに人工歯を着ける処置を行います。この時仮のアバットメントを装着している場合、人工歯を着けるための最終的なアバットメントに取り替えます。
人工歯装着後、噛み合わせなどを調整し、問題がなければこれで治療は終了です。
一回法のメリットとデメリット
メリット
一回法の最大のメリットは、手術が一回で済むため、患者さんの負担が少ないことです。
デメリット
一回法のデメリットとしては、全ての人に一回法を適用することが難しいことです。特に顎の骨の厚みが足りない場合、一回法での治療が難しく、適用できないケースが多いでしょう。この場合、顎の骨の形成が必要なため、一回法では感染リスクが高くなります。そのため一回法ではなく二回法が適用となります。
また歯周病が原因で歯を失った場合も感染リスクが高まります。というのも、一回法ではアバットメントを露出した状態で安静期間に入るため、インプラント周囲の衛生を清潔に保つ必要があります。
二回法では歯ぐきを完全に閉じてしまうため、感染リスクは二回法のほうが低いと言えます。また全身疾患をお持ちの方も、一回法の適用は難しくなります。
二回法の流れ
インプラント二回法は、外科手術を二度に分けて行う治療法です。インプラント体を顎の骨に埋め込むまでの工程は一回法と同じですが、その後の流れや治療期間に相違が出てきます。
1.インプラント埋入手術(一次手術)
局所麻酔を打ち、歯ぐきを切開して専用ドリルを使って顎の骨に穴を開け、インプラント体を埋め込みます。その際アバットメントは取り付けず、切開した歯ぐきを縫合してインプラント体を完全に塞いで結合期間に入ります。
2.骨との結合期間
一次手術のあと、顎の骨とインプラント体が完全に結合するまで安静期間に入ります。この期間は患者さんの顎の骨の状態や部位により異なりますが、3~6ヵ月くらいが目安とされています。
3.二次手術
インプラント体が顎の骨としっかり結合したことを確認したあと、二次手術を行います。局所麻酔を打ったあと歯ぐきを切開し、インプラント体にアバットメントを連結させる処置を行います。その後歯ぐきの回復を待ちます。
4.人工歯の型取り、装着
アバットメントを着けた後、歯ぐきの回復が確認できたら人工歯の型取りを行います。人工歯が出来上がったら着けて、噛み合わせなどを確認して治療が終了します。
二回法のメリットとデメリット
メリット
ほとんどの症例で適応できることが大きなメリットです。顎の骨が少なく、骨形成の必要がある方でもこの二回法を適用することでインプラント治療が可能です。全身疾患がある方も、この二回法を適用することでインプラント治療が可能となります。
また一次手術のあと、一度完全に歯ぐきを閉じてしまうため、感染リスクが低いこともメリットのひとつです。
デメリット
二度外科手術を必要とするため、治療期間が一回法よりも長くなってしまいます。
患者さんの口腔内に合わせて、最適な治療法を
一回法と二回法の違いをお話しましたが、患者さんの口腔内の様子などで一回法が適用できるのか、二回法になるかは異なってきます。「一度の手術で済むから」と一回法を希望しても、症状により難しい場合があります。割合としては、二回法の方が多いのが現状です。
患者さんの状態により、治療の進め方や回数、治療期間は違いが生じてくるのです。大切なことは、再びしっかりと噛む機能を取り戻すことです。そのためには患者さん自身の状態に最適な治療法を選択することが最優先です。
インプラント治療を行う際には担当医としっかり話し合い、納得がいくまでじっくりと考えてよりよい結果を出す治療選択をしましょう。
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